さいきん、巷でウィリアム・モリスをよく見る気がします。
ハイストリートファッションブランドとのコラボだったり、テレビ露出だったり。
先日、当時の原本の保存についても放送されていました。
現在、私がウィリアム・モリスについてわかっているのは以下のようなことです。
- 産業革命の中で手工業を重視した
- アーツアンドクラフツ運動で有名
- 社会主義運動家(「赤」毛連盟に偽名として登場・アイルランド問題)
手作りのデザイン
最近知ってびっくりしたのが、ウィリアム・モリスの植物のデザインは、すべて手作業で作られていたこと。
たくさんの木版をつかい、多数の層から成る植物の模様ができあがっていました。
(浮世絵の作業を膨大にしたような感じです。)
壁紙やカーテンなど大きなものもあったのでは?と考えると、ちょっと気が遠くなりますね。
産業革命に伴い、失業した人たちの受け皿にもなっていたのかなーと思いました。
また、ウィリアム・モリスのつくった本は、装丁にこだわるだけでなく、中の文字も『手引き活版印刷機』で書いていたそうです。
これも、手動で操作するのが特徴です。
現在も同型の機械があり、展覧会などでみることができるそうです。(アルビオン型手引き印刷機)
ライフスタイルの思想
役に立たないものや 美しいとは思わないものを 家に置いてはならない。
おそらく、ウィリアム・モリスの言葉の中で現在も繰り返し引用される一節です。
当時、彼のデザインを求めた人は、このライフスタイルも求めていたのではないでしょうか。
この考え方は、粗悪品や大量生産品に飽きていた人にぴったり。
機能性という美しさのカテゴリをつくることで「モノの少ない暮らし(厳選されたものに囲まれる暮らし)」を肯定したのだと思います。
現在この言葉をとくに頻繁に引用するのは、ミニマリストの人たちとか、ていねいな暮らしの人たちです。
機能美を追求することや、持たない暮らしを突き詰めることと相性がよいようです。
19世紀の無印良品だったのかな
ブランドとしてこうして愛されることについてどう表現していいのかわからないのですが、
端的に言うと「ウィリアム・モリスって19世紀の無印良品だったのかな」と思いました。
無印良品でインテリアを買う人って、その雰囲気も受け入れ、暮らしを統一していく傾向がありますよね。(たぶん)
背景にあるストーリーや思想ごと買い物をしている。
ミニマリストの人やシンプルライフの人はとくにその傾向が顕著で、無垢の木の家具を揃えたり、オフホワイトの小物を揃えたりしています。
それって結局「美しいと思わないものを~」ってこと。
彼ら自身も、ウィリアム・モリスの発言を引用し、日常の中の実用的な美を追求しています。
19世紀にウィリアム・モリスの思想に触れた人も、同じように行動したのではないでしょうか。
現在も残る建築例(ギャンブルハウスなど)をみると、内装から家具まですべて手作りのもので統一しているようです。
そこまでこだわれるのは、お金持ちだけだったと思いますが。
でも、ウィリアム・モリスの思想に感銘を受けた人がその布や本を買ったら、きっと手作りのものと組み合わせたでしょう。
そうやって自分の世界観を形作っていったのでしょうね。
ブランディングという概念は、最近のもののように語られることが多いですが、
19世紀とかその前の時代からあったのかもしれませんね。
名前がなかったものに名前がついたことで、みんなが意識するようになっただけで。
これまで、ウィリアム・モリスはデザインとして惹かれていただけでしたが、今後はその方面にも目を向けていきたいです。